ご挨拶

1999年6月19日、横浜の片隅で小さな産声があがりました。
銀塩モノクロプリント用レンタル暗室 THE DARKROOM が生まれた瞬間です。

デジタルカメラの誕生は、広くカメラを普及させることに成功しました。
多様な形体をとることができるデジタルカメラは、携帯電話を筆頭にカメラをより身近なものとし、写真を多くの人々に寄り添えるメディアに育てました。

それと同時に起こったのが表現方法の氾濫です。
オーバースペックとも思えるカメラが市場には出回り、パーソナルコンピューターの存在によって写真はより非現実の世界へ足を踏み入れることになりました。
多様な技術が提示されるにつれ、逆に撮影者の主張は薄れていってしまうようにも感じられました。

そういった状況の中、私は新たな輝きを放つ存在を感じました。
それが、銀塩モノクロプリントです。
色はなく、大幅な修正もきかず、フィルムカメラは画像を確認して撮り直すこともできません。
しかし、その制約こそが一枚の写真を作り上げるということに真剣に向き合わせ、情報が足りないということが観る者の感性を刺激し、人の持つ豊かな想像力を引きだしていたのだと改めて気付かされました。
デジタル全盛の現在だからこそ「足りないことから学べ」というメッセージを、銀塩プリントが私たちに強く投げかけてきているように思えたのです。

そうした思いのもと、まず始めたのがレンタル暗室の運営でした。
幸運にも、私の思いに多くの方々のご賛同を頂け、日本初の本格的レンタル暗室であるTHE DARKROOM は1999年に横浜で開業を果たすことが出来ました。
開業以来プロ・アマ問わず多くの方々にご利用頂き、銀塩モノクロプリントの魅力を伝える発信基地として、現在まで営業を続けることができております。

また、レンタル暗室の運営を続ける中で、新たな実感として湧いてきたのが、フィルム文化とデジタル文化それぞれが持つ特徴、優位性を上手く生かし合えば、写真は更なる可能性を獲得できる、という思いでした。
デジタルとフィルムは、もはや写真における全く別のジャンルであると私は考えており、その両者が対立するのでなく、同じ方向を見据えることで写真は新たな次元に向かえるという確信がありました。
そのため、フィルムや銀塩モノクロプリントのみでなく、広く写真の可能性を探る活動を行えるよう、私たちは2004年に団体名称を THE DARKROOM INTERNATIONAL に変更し、特定非営利活動法人格を取得しました。
以降、Yokohama Photo Festivalなど写真に関わる様々な活動を行っています。

THE DARKROOM が産声をあげてから十数年が経ちましたが、未だ課題は山積みで、むしろ年を追うごとにより多く降り積もっているようにも思えます。
しかし、これからも私たちは「写真の可能性」という答えのない道を、手探りで、がむしゃらにでも進み続ける団体でありたいと思っております。
今後とも、私共の活動を温かく見守って頂けますと幸いです。

 

THE DARKROOM INTERNATIONAL代表
齋藤久夫